西洋料理サービス講座

 

よい飲食サービスのために

 

「いかがですか」に始まり「いかがでしたか」で終わる

 

食事サービスや飲物サービスでのCAの役割は、「お客様に食事を楽しんでいただくお手伝いをする」ところにあります。中には、お腹が空いているから食事を提供するのだと勘違いしている人がいます。

楽しんでいただくためには、まず、勧めします。

お食事をいかがですか

そして、食事の終わりには、 

お食事はいかがでしたか

さらに、コース毎にも、

オードブルをいかがですか

の言葉が必要です。そして、それを楽しんでいるかどうか確認します。そして、下げるときに、

オードブルはいかがでしたか

です。Entrėeの場合は、さらに、

お肉の焼き具合はいかがですか

と確認します。焼き具合が違っていたり、味が悪かったりすれば、お客様は食事を楽しめません。

 


「おいしいよ」の言葉をいただく

 

「いかがですか」もしくは「いかがでしたか」は、サービスする側の気持ちを伝える言葉です。これに対して、特に問題がない場合は、お客様もサービス側の気持ちを汲んで、

おいしいよ

おいしかったよ

と応えてくれます。この言葉をお客様に言わせることが大切です。

 


お皿の持ち方

 

サービスWagon中段から、Medium PlateやSmall Plateを取り出すとき、両手でお皿のふちを支えるようにしていますか。親指がお皿の表面に触れるような取り出し方を、片手で行っていませんか。

オードブルやチーズを盛りつけたお皿を、お客様に出すとき、親指のツメが食べ物に触れるような持ち方をしていませんか。食べ物を盛りつけるお皿の扱いは、慎重に行います。

お皿の基本的な持ち方は、親指以外の4本の指の腹でお皿をささえ、親指はふちに添えるようにします。親指が、お皿の表面に触れるような持ち方は決してしません。

サービスWagon中段にあるお皿を取り出すときも、両手をお皿のふちに添えて持ち上げ、その後、利き手の4本指をお皿の裏側に指し入れるようにします。これが1番美しいお皿の取り出し方です。

食器類を、お客様の目の前で、無造作に持っている人がいます。なんとなく嫌な印象を与えてしまいますので注意を・・・。

 


もっと熱いのを

 

アメリカのあるレストランで、紳士が食事をしています。今日はスープでも飲もうかと、"Soup of the Day"を注文しました。紳士のテーブルを担当しているのは、1ヶ月前にウェイターになったばかりの若者です。

   紳士:「このスープはぬるい。熱いのを持ってきてくれ」

ウェイター:「申し訳ございません、すぐに熱いのを持ってきます」

ウェイターはすぐに調理場へ飛んで返り、新しいスープを持ってきました。

   紳士:「きみ、またぬるいぞ、もっと熱いのをサービスしてくれないか」

若いウェイターは、スープ鍋からすくってきたので、「熱い筈なのに」と思いながらも、また調理場に戻り、新しいスープを持ってきた。今度は、スープが充分熱いか確かめてからサービスすることにした。

ウェイター:「お客様、スープが熱いことを確かめました。
                 どうぞ、召し上がってみてください」

   紳士:「きみ、まだぬるいぞ。だって、
            君の親指がスープボウルの中にあるじゃないか」

 


師匠と弟子

 

茶道の世界の話です。師匠と弟子の違いは何かというと、師匠はお手前を客人の前に置くとき、いわゆるイッパツで決めるそうです。弟子は、まだまだ、それができません。

皆さんはどうですか。テーブル上の一番よい位置に、お皿やカップを置くことができますか。

師匠の域に達していない人が、イッパツで決めようとしても無理です。皆さんがサービスするときは、一旦、テーブルに置いた後で、お皿などが、お客様の手前の一番よい位置にくるよう、微調整するとよいでしょう。丁寧な感じがします。

 


嫌々サービス

 

ものをサービスするとき、してはいけない動作があります。それは、腕が伸びきったサービス動作です。

たとえば、おしぼりをサービスするとき、腕が伸びきっていると、あまりよい感じを与えません。腕が伸びきっていると、顔や身体が反ってしまいます。お客様からみると、嫌々サービスしているように見えます。少し肘を曲げて、オシボリバスケットやオシボリを乗せたTrayを持つようにすると、身体も自然とお客様の方に近づきます。

 


Serving Trayの高さ

 

一般の会社のOL達は、来客にお茶を出すとき、お盆は胸の高さに持つように教育されます。レストランのウェートレスも、料理を運ぶときは、胸の高さで持っていませんか。

新人訓練の時、Trayは腰の位置で持つように習ったと思います。揺れる飛行機の中で、Trayに物を載せて、お客様のところに持っていったり、Tray上にカップを載せてコーヒーを注いだりします。その動作は、常に着席しているお客様の目線より下で行う必要があります。

お客様の目線より上で、熱いものを注いだり、運んだりすると、お客様は不安に感じるからです。また、低ければ低いほど、何かあった時に、熱いものが飛び散るのを防げます。

 


手ぼんサービス

 

新人は、訓練で習ってきたばかりなので、サービスするときは、必ずTrayを使用します。経験を経るにしたがって、グラスなどを、安易に手で持って行く人がいます。これを「手ぼん」といいます。街中の安レストランの動作ですので、機内ではかならずTrayを使用します。

 


サービスはこだわり

 

お客様に、美味しく召しあがっていただこう。そのためには、熱くするものはどんなことがあっても、十分温めて提供しよう。どんなに忙しくても、絶対笑顔を忘れずにサービスにあたろう。そして、お客様に何かを持っていくときは、かならずTrayを使用しよう。Cabinはきれいにしておこう。だから、通路などにゴミが落ちていないようにしよう。

これらこだわりの一つ一つの積み重ねが、皆さんのサービス能力の向上につながります。それ以上に、皆さんのその気持ちが、お客様にいつの間にか伝わりますし、FLTが終わったあとも、すがすがしい気持ちでいられること請け合いです。

「まぁ、イイッカ!」と思っているあなた

まだまだ未熟者ですヨ・・・。

 


参考文献

 

「フランス料理の本」全5巻 辻静雄著 講談社
「世界の名酒事典」講談社
「ヘッドウェイター必携」加藤祥・鈴木博著 柴田書店
「食の文化史」大塚滋著 中公新書
「食の社会学」加藤秀俊 文藝春秋
「たべものと日本人」河野友美 講談社現代新書

 


 

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