しぐさ研究講座

 

ボディランゲージ Body Language

 

腕組み

 

人間の動作を研究する学問に、キネシックス(動作学)いうのがあります。それによると、腕組みの動作は、

「心臓を守る」 ⇒ 「自分を守る」 ⇒ 「自分の安全範囲を広げる」 ⇒ 「自分にあまり近づいて欲しくない」

となります。同時に、「自分を大きく見せる」という意味もあります。

異民族の集まりであるヨーロッパでは、常に自分の安全を確保する必要があり、それが動作に無意識に表れます。上下関係にきびしい日本では、「オレが偉いのだぞ」を無言に表現する時にこの動作が表れます。

また、ヨーロッパでも日本でも、相手の話にあまり賛成したくない時にも、腕を組むことがあります。腕を組んで人の話を聞くのは、相手の話に対して壁を作っていることになります。そのため、相手は、あなたの無言の抵抗を、無意識のうちに感じるようになります。会社の中でも、そのような態度をとる社員は、上司にも、部下にも、あまり好かれません。ただし、話し手も聞き手も、腕を組んでいることがあります。この時の腕組みは、相手に同調していることを意味します。

 


サービススタッフと腕組み

 

ウェイターやウェイトレスたちは、いつ、お客様に呼ばれてもいいように、店内を見渡せるところに立っています。そのとき、決して腕を組んでいることはありません。腕を組むと、安全範囲を確保する=自分に近づいてほしくない、となってしまうからです。

サービスがひと段落し、用事のないCabin Crewは、Jump Seat付近で、客室内を見ています。この時も、腕を組んでいると、お客様は近づけなくなってしまいます。また、お客様の目には、偉そうな態度のCAとして映ります。

 


江戸商人は・・・

 

商人にとって腕組みは衰運のしるしとされた。商人が腕組みをしていては、お客がお店に飛び込んでいくわけにはいかず、遠ざかってしまう。腕組みをしているときはたいてい、本人が緊張していて他人を寄せ付けないときが多い。にこやかに手を広げて、胸を開いてお客様を迎えなくてはならない。

同様に、お客さまを迎えるとき足組みをしていたら、相手はどう思うだろう。人と会っているとき、とくに目上の人と会っているときに足を組むのは、相手を軽く見る行為になる。

商談には禁物だった。着物だった当時、女あるじが足組みをしてお客に接したら、前がはだけて見苦しいばかりでなく、人品も疑われた。話を聞くときは、きちんと膝をそろえ、上体をただして、手を膝の上においていなくてはならない。


商人道「江戸しぐさ」の知恵袋 越川禮子著より


恋人を待つ女性の腕組み

 

腕組みは、防衛的姿勢を表わすことが分かりました。街中で、腕を組んで誰かを待っている女性を見かけます。これは、いわゆる防衛サインとよばれ、「私にはもうすぐ恋人が来るの、だから他の男性は、私に手をださないで」ということを表現しています。

 


両手を腰に当てる

 

人前で、自分を大きく見せたい、と無意識に思っているときに出るのがこの動作です。この時は、この動作に見合った言葉を伴います。欧米で、女性同士が口論をするときにもこの動作が出てきます。このとき、腰にあてた手は握りこぶしになっています。これも機内で、Cabin Crew(サービス側)がしてはいけないしぐさです。

 


両手を後ろに回す

 

ボーディングの時、手を後ろに回したまま、お客様に挨拶をしていませんか。また、お客様と話をしている時はどうですか。

握手の元来の意味合いは、手に武器を持っていないことを相手に証明するためのしぐさでした。手と武器は、昔から密接な関係にありました。そして、手を後ろにしているのは、何かを隠している意味合いが含まれることになります。(あなたに手を出しませんという意味もありますが・・・)

このしぐさも、サービス業に携わる人は避けることが肝心です。

 


足組み

 

足を組むしぐさは、もともと欧米のものです。欧米では、この動作は、「リラックスしている」ことを意味します。

したがって、リラックスしてもよい場所では、足を組んでも構いません。ソファーなどは、むしろリラックスするためのものです。足を魅力的に見せるために、欧米の女性は、積極的に足を組みます。ヨーロッパ人CAの採用面接でも、多くの女性は足を組んでいました。

昔、教官たちは、CA訓練生が、足を組んで授業を聞いていると注意しました。でも、なぜ足を組んで授業を聞いてはいけないのか、解説できる教官はいませんでした。イギリス人やドイツ人CA訓練生が来て困りました。彼女たちは、授業中、足を組んでいます。欧米では、授業中、足を組んでも注意されません。教官たちは、邦人訓練生に対してと同じように、足を組んでいる訓練生を見つけると、注意しました。ところが、外国人たちは、"Why"と聞いてきます。

「Whyと言われたって、困るわ」

と心で思いながらも、

「日本では、授業中、足を組まないことになっているの!」

と、いい続けました。

でも、訓練生は、今ひとつ納得できない顔をしています。彼女たちに言わせれば、
「足を組んでリラックスしていた方が、授業に集中できるし、眠くならない
 んだもの」
確かに、彼女たちは、授業中、居眠りしません。

日本では、儒教の影響で、上司や恩師や先輩の前で、リラックスしたかっこうはしません。授業もそうです。教師が話しているときに、リラックスしたかっこうをすることは、礼儀に反していると教わってきています。

 


どちらが偉いの

 

昔、ホノルル航務課での出発ブリーフィングは、ソファーに座って行っていました。このような時、足を組んでいるのは誰か、観察してみてください。出発前でも、リラックスしている人、つまり、シニアークラスが足を組んでいる筈です。FLT前に緊張しているジュニアーたちは足を組んでいません。

あるホテルのロビーで、ビジネスマンらしき2人が、ソファーで商談をしています。1人は足を組んでいます。もう1人は、浅く座って話をしています。どちらが買い手で、どちらが売り手かというと、足を組んで入る方が買い手と思って間違いありません。この2人の関係では、足を組んでリラックスしている方が優位な立場にある人です。

同じロビーの大きいソファーには、何かの集まりらしく、女性6人が座っています。この中で、誰がリーダー的存在かというと、もし足を組んでいる人がいれば、その人です。

最近は、昔ほどうるさく言わなくなりましたが、Jump Seat着席中に、お客様の前で足を組むのも、お客様とサービス側との関係でいえば、あまり好ましいことではありません。

 


靴のヒールをブラブラ

 

Jump Seatに座り、足を組み、つま先にひっかけたローヒールをブラブラさせている人がいます。この動作は、「欲求不満の動作」と言われ、欧米では、娼婦のしぐさとも言われています。もっとも品のない動作ですので、他人の前では、絶対しないでください。

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