仕事と健康・家庭講座

 

動物行動学

 

子供ができる

 

動物世界では、排卵は2つに分かれるそうです。ネコ、ライオン、ウサギは、交尾して初めて排卵が起きるので「交尾排卵」と呼びます。一方、交尾に関わりなく排卵が起きるのは、人間、イヌ、キツネ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシなどです。これを「自然排卵」と言います。

ところが、排卵周期28日の人間も、交尾排卵に似たことが起きることがあるとのことです。長く家をあけている船員が、つかの間の休日を妻と一緒に過ごします。受精のタイミングに合わせて休日があるわけではないのですが、船員の家族にもちゃんと子供ができます。ヨーロッパ人は、このようなことに関してすぐ研究します。

第一次世界大戦、第二次世界大戦のとき、ドイツ軍の兵隊が国境付近の戦場で戦っていました。今度は、その部隊を国の反対側の国境に配置転換する必要があり、移動させました。移動にあたって、国を横切るので、兵士たちに1、2日の休暇を与え家族や恋人の元に帰しました。ところが、しかるべき月日が経つと、兵士たちのパートナーは、我も我もというように子を産んだのです。それは、せっせと励んだから、というだけでは説明つかないほどの出産ラッシュになったそうです。そこで、研究者たちは、このパートナーたちが、月経周期のいつ頃にあたっていたか調べたのです。驚いたことに、排卵期の女性だけでなく、排卵が終り、次の排卵が起きるにはまだ早い女性たちまでが妊娠していたのです。それどころか排卵が終って、次の月経までの、妊娠しないはずの時期にさえ、かなりの頻度で妊娠していることも判ったのです。これなどは、性交が引き金となって排卵が誘発される「交尾排卵」としか説明がつかないほどだったのです。

1996年、ブリティッシュ航空が粋なはからいを決め、クリスマス時期に乗務しているキャビンクルーや女性パイロットは、Stay先にパートナーを呼んでもよいことにしました。その4ヶ月後、会社には妊娠の申し出が相次いだそうです。その数、591人にものぼり、6000名いたキャビンクルーたちのうち、約1割の人が妊娠してしまったそうです。

アメリカでは、日本軍の真珠湾攻撃の268日後には出産ラッシュになり、1965年のニューヨーク大停電の270日後は、どの産院も満杯状態になったそうです。

そもそも、欧米では、クリスマスから270日前後に出産が増える傾向にあるそうです。ブリティッシュ航空、真珠湾攻撃、ニューヨーク大停電など、嬉しい時、楽しい時、そして、恐怖を感じたときなど、女性は排卵が起きることが分かっています。オギノ式が完全の妊娠予防にならないのはこのようなことがあるからだそうです。

日本人も、2011年3月の東日本大震災で大きな恐怖を味わいました。それ以降、結婚ブームが起きています。

「浮気で産みたい女たち」 より

 


産み分ける

 

インド洋にあるセイシェル諸島には、セイシェルヨシキリという鳥が生息しています。この鳥は、オス・メスの産み分けをするそうです。エサが豊富で、外敵が少ない、質の高い縄張りに住んでいる夫婦は、圧倒的に娘を産むそうです。そして、娘は親の縄張りに住み、新しい卵を温めたり、親のヘルパーとして一緒に過ごします。

ところが、エサ少なく、外敵が多い時は、反対に、息子を多く生みます。息子は、ある程度大きくなると、縄張りから出て行ってくれるからだそうです。また、ヘルパー(娘)が多くなりすぎると、食い扶持が多くなりすぎるので、やはり、息子を産むそうです。

一方、動物学者のナンシー・バーリーという学者は、
『メスが相手のオスの魅力次第で息子を多く産む、あるいは娘を多く産む傾向にある』
ことに関して、オーストラリア原産の小鳥キンカチョウを使って研究しています。キンカチョウのオスは、鮮やかな赤いクチバシを持ち、頬には大きな茶色のパッチ模様がある。背は灰色、脇腹は白い点々の混じった茶色の羽で覆われ、腹はオフホワイトです。尾は大柄の白黒の縞模様になっています。メスはオスに比べ地味な色をしています。キンカチョウは一度つがったら、一生相手を変えない鳥です。

何羽かのキンカチョウのオスとメスを鳥かごに入れ、観察していると、オスの方は、赤い足環をしているオスが一番モテテいるのです。青やグリーンの足環のオスは、なかなかメスとつがうことができずにいました。オレンジ色の足環のオスはほどほどにつがっていました。反対に、オスは、ピンクや黒の足環をつけたメスに惹かれていました。やはり青とかグリーンの足環をつけているメスには魅力を感じていません。オレンジの足環のメスもほどほどにオスとつがっています。


バーリーは、魅力的なオス、普通のオス、もてないオスと、魅力的なメス、普通のメス、もてないメスをかけ合わせる実験をしました。その結果、産まれたのは、

この実験で分かったのは、メスはオスに魅力を感じると、オスを多く生んでいる事実です。お互い同じレベルだと、オス・メスの比率が同じくらいであり、オスに魅力を感じていないとメスを産んでいることが分かりました。オスは産み分けに参加できませんので、産み分けはすべてメスが行っているのです。

「浮気で産みたい女たち」 より

 


人間の世界は

 

この研究を紹介している竹内久美子さんによると、人間社会でも、同じことが起きているのではないかとのことです。たとえば、愛人にできる子供は、男の子が多い傾向にあるそうです。彼女の言葉によると、

『愛人は、まず相手の男性の魅力というものをよく評価しており、彼の魅力の元となっている遺伝子を取り入れたいと思っている。それが、彼女の主たる目的である。遺伝子の真価を発揮させるためにはぜひとも息子を産むべきだ。具体的な産み分けの方法についてはともかく、それが、愛人が息子を産みやすいことの第1の理由となるだろう』

竹内さんは、また、別の研究を紹介しています。イギリスの名士の妻は息子をよく産んでいるという研究です。ミューラーという人が、1789年~1925年生まれで、一代で財をなしたような実業家1179人を調べたところ、息子が1789人に対して、娘は1522人で、かなり多く息子が生まれていることが判明しています。

皆さんも、ダンナが、まだ会社内で地位が低いときや、社会的にまだ成功していないとき、または、結婚したけれどダンナにあまり期待ができないかもと思っているときなど、相手に不安を感じているときは、もしかしたら女の子を産むかもしれません。一姫二太郎といいますが、これなども、動物行動学的に見ると、理にかなっています。生活が安定してくると、男の子が生まれる傾向にあるからです。

 


睾丸の大きさの研究

 

動物界では、一夫一婦制のオスの睾丸は概して小さく、一夫多妻や乱婚型のオスは、大きな睾丸を持っているそうです。睾丸は精子を製造するところです。あちこちにばらまく動物は精子を多く必要としますので、それに合った大きさの睾丸を持っています。また、繁殖期が短い動物も、その期間中にできるだけ多くの精子を製造し、多くのメスと交尾する必要があるので、睾丸が発達しています。

たぬきのオスは、一度つがったら、浮気もせずに、一生同じ相手と過ごします。だから、たぬきの睾丸は非常に小さいそうです。羊は身体の割には大きな睾丸を持っています。羊は繁殖期間が短い動物です。短い期間内により多くの精子をバラまく必要があるからです。

繁殖シーズンというものがありませんので、人間の男の睾丸は、他の動物に比べ、体重比率からするとかなり小さい方に属します。体重の約0.08%で、コーカサイド系の人で両方の睾丸合わせて約50gくらいだそうです。民族的に比較すると、コーカサイド系の方が大きく、モンゴロイド系はコーカサイド系に比べ半分ぐらいだそうです。それでも、コーカサイド系にしても、モンゴロイド系にしても、大きい人だと、小さい人の倍の大きさだそうです。

この研究からすると、精子の製造能力が高い人は、もしかしたら・・・ですが、反面、精力的にものごとをこなしていける人かもしれません。

 


あなた、少ない!

 

夜の夫婦生活で、ケンカになることがあります。久しぶりにベッドを共にしたけれど、彼が放出した精子の量がいつもより少ない。きっと、他の女のところで放出したから少ないのだわ、などと解釈して、疑惑の目を夫に向けることがあります。おかしいなと思ったら、素直に聞けば、誤解が解けることもあるのですが、このようなことはなかなか口にできません。そのうち、疑惑の念だけが膨らんでいき、夫婦関係がおかしくなったなどという話しも聞きます。

イギリスの動物学者のロビン・ベイカーとマーク・クリスは、性交後の精子の量と、そのときの男女の性生活や生活行動も詳しく調べました。その結果、
『放出される精子の数は、彼女との前回の性交からの経過時間、特にその間、いかに彼女と過ごし、他の男から彼女をガードしていたによって著しく変化する』
ということを発見したそうです。

女へのカガードが甘かった場合、もしかしたら、彼女は他の男と性交しているかもしれず、そのことにより被害を食い止めるためには、とにかく精子を多数送り込むことだろう。そうして彼女の卵が他の男の精子によって受精させられる確率を引き下げるのである。一方、女のガードをしっかりなされていたら、彼女の浮気の可能性も少なく、男としてあまり精子を送り込む必要がないからだそうです。

 


結婚すると・・・

 

恋人同士の男と女は一緒に住んでいるわけはないので、会うのはせいぜい週に1回から2回といったところです。これでは、女のガードはかなり甘いので、男は、会えば必ずといっていいほどにヤル必要があるし、また、そうしたいと欲している。ところが、結婚して一緒に暮らし始めて見ると、もはや女のガードは十分である。何しろ、毎晩帰宅し、妻を監視している、その上、性交する必要があるのだろうか。

ダンナに、「うちの妻は、もしかしたら・・・」なんて思わせておくのもよいかもしれません。

 


オルガスムスと受精

 

ベッドの上で、一生懸命に励んでいるのに、女性が達してくれないと、男性には不満が残ります。それが原因で夫婦関係がまずくなることもあるようです。そこで、女性がイッタふりをするなんてことも起きます。

ところが、遺伝子を残すために交尾をする、という動物行動学の観点から見ると、これは男性の誤解のようです。というのも、女性が先にオルガスムスを迎えてしまうと、受精が起こりにくくなることが分かりました。女性はオルガスムスによって、大量の粘液を分泌し、その後精子がやって来たとしても、その侵入をブロックする準備を整えてしまうそうです。

男と同時か、男より後の女のオルガスムスは、今度は逆に男にとって好ましい。オルガスムスのときの膣と子宮の激しい収縮が、精液を膣のいっそう奥の方へと吸いこんでいくからです。したがって、受精の確率は高まるそうです。

竹内久美子氏の著書

「女は男の指を見る」 新潮新書
「浮気で産みたい女たち」 文春文庫
「そんな、バカな!」 文春文庫
「賭博と国家と男と女」 文春文庫
「浮気人類進化論」 文春文庫
「男と女の進化論」 新潮文庫
「もっとウソを」 文春文庫

 


 

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