口の動き
PAグレードを取るのに苦労している人の口を見ると、ほとんど動いていないことに気がつきます。新人アナウンサーが、最初にさせられるのは、口動かしの訓練です。NHK衛星放送で、英語ニュースを担当しているアナウンサーの口をよく見てください。思いっきり口が動いています。それもタテにもヨコにも動いています。
まず、「ア」「エ」「イ」「ウ」「エ」「オ」「ア」「オ」と、口を大きく開き、何回も発音してください。特に、「ウ」「オ」の音を出すときは、口をとがらせてください。日本人は、どうしても日本語的口の動かし方になってしまいます。英語では、口を大きく開けたり、とがらせたりすることが、まず大切です。
とんがり口
日本語では、口をとがらせて音を出すことはあまりありません。反対に、英語では、唇が突き出た状態、つまり、とんがり口で発音することが多いのです。その典型的な例が、"R"音を出すときです。日本人が"R"の発音をうまくできないのは、口がとがっていないからです。口の構造上、口をとがらすと、舌は自然に後ろの方にいきます。そこで声を出すと、"R"の音が出るわけです。
- Right
- 口をとがらせて「ラ」と言ってみてくさい。
- Sure
- 「シュ」と言ったら、すぐに口をとがらせて「アー」を言う。
- Air
- 「エ」と言ったら、すぐに口をとがらせながら「アー」と発音する。
- Girl
- 「ガー」と言いながら、口をとがらせる。そして、最後に口をゆるめ、舌を歯ぐきに持っていき"L"音を出す。目をつぶって、彼がキスしてくれるのを待っている時の唇の状態(おちょぼ゙口)より、もっとつきだしてください。
人力車夫の耳
カタン(Cotton)糸、メリケン(American)粉、ミシン(Machine)などの単語は、明治の始めころ、横浜の人力車夫を通じて、日本語に入ってきた言葉だと聞いたことがあります。車夫がお客としてイギリス人やアメリカ人を乗せながら、耳で覚えた英単語が、そのままカタカナになって、日本語に取り入れられていったのだろうと思います。
こういう話の中で、私がもっとも感心したのは「ウレ」です。車夫によれば、「赤」を意味する単語は「ウレ」なのだそうです。残念ながら、「ウレ」は普及せず、日本語として定着しなかったのですが、Redを「ウレ」と聞いた車夫の耳の良さにすっかり感心してしまいました。「R」の音を発音するときは、発音の前にわずかに「ウ」の音が入ります。
「ウレ」は「R」を発音する際に、重要なヒントを与えてくれています。
「街角のイギリス英語」より 大村善勇著 丸善ライブラリー
「W」音
単語の中に、"W"の文字が見えたら、やはり口をとがらせて音を出してください。たとえば、Where、When、What、Who、How、White、Wright、Few等の単語を発音するときです。「Where」であれば、口をとがらせて「W」を発音してみてください。その音は、「ホェアー」ではなく「ウェアー」に近くなります。
英語国の人が「ワタシハ」と発音するとき、ローマ字の「watashiwa」と発音してしまいます。「w」があるので、どうしても口をとがらせて「wa」と発音してしまいます。そのため、外国人風「ゥワタシハ」になってしまいます。教え子のイギリス人Crewは、日本語を、耳で徹底的に覚えさせられましたので、日本人風「ワタシハ」と発音できます。
"We will be taking off soon."
を発音してみてください。口をとがらせて"We will"と発音します。「ウィー」と言った後、口がゆるみますが、「ウィル」を発音するために、すぐにまた口をとがらせなければならないので大変です。
「Why」は「ウァイ」
「W」で始まる音について、イギリス人の友人から、多くの日本人は"Where" を「ホェアー」と発音し、"Why"を「ホワイ」と発音していると指摘されました。確かに、英語では「ウェアー」、「ウァイ」と発音します。これは私たちが、学校時代、「ホワイ」と習ったからでしょう。でも、よりイギリス英語らしく発音するなら、日本的発音の「ホ」は忘れるべきです。
もう一つ、ずいぶん昔に、イギリスにいたときに言われたことがあります。
定冠詞「a+子音で始まる単語」a pen
「an+母音で始まる単語」an apple
がありますが、前者は「ア」、後者は「アン」と発音するよう、中学校の初め頃に習いました。「エ」としか聞こえないときもありますが、この「a」は「エイ」と発音するべきなのです。注意していろんな人の発音を聞きましたが、イギリス人はみんな「エイ」と言っていました。 学校で習ったのに…と、当時の私にはショックなことでした。
"Could you find a..."
と次に来る言葉を探しているとき、「エイ」と発音しておけば後に何がきても、「あ~、"ア"だったかな、それとも"アン"かな?」なんてそんなに気にしなくてもよくなるのではと思います。
イギリス留学体験CAより
[U:]音
この発音記号のときも、口を思いっきりとがらせてください。たとえば、Pool[pu;l]、Noon[nu:n]、Rule[ru;l]、Soon[su:n]などです。
思いっきりではないが、やはり口をとがらせて発音する単語に、Put[put]、Book[buk]、Good[gud]、Look[luk]等があります。"U" の文字をみたら、口が自然にとがるようになってください。
とがり口の練習
「R」「U」「W」音は、口がとがらせて発音することがわかりました。それでは次の文章を、RとUに注意しながら、発音してみてください。
"You are requested to refrain from smoking."
口をとがらせて発音する部分が多いことが分かります。