飲料サービス講座

 

お酒の知識

シャンパンでのもてなし

晩餐会に招待したとき、最初にシャンペン(Champagne)を提供するのは、最高の歓迎の気持ちを表 していることになります。また、正式な晩餐会では、必ずシャンペンがサービスされます。

また、欧米社会では、デートで食事の時、もし彼がシャンペンを注文したら、彼女に対して最高の敬意を払っていることを意味します。

シャンペンをサービスするということは、それほどの意味があります。このような背景から、機内でもWelcome Champagneサービスをすることがあります。

 


 

最高のデート

ロールスロイスで彼女を迎えに行き、リッツホテルあたりで食事をし、食後は、彼女を自分の屋敷に招待し、今宵ひとときをドンペリニヨンで楽しむ、これをさりげなく行うのが一流の男性のやり方だそうです。

 


 

Sparkling Wine

一時期、ビジネスクラスでは、Welcome Champagneサービスで、アメリカ産のSparkling Wineを使ったことがあります。それをシャンパンだと言ってサービスしたことに対して、やや知ったかぶりの日本人旅客から、「いい加減なことを言ってサービスしている」と苦情が来たことがあります。たしかにその旅客の言うとおりでした。

シャンパンは、フランスのシャンパーニュ(Champagne)地方で生産された発泡性ワインのことを言います。それ以外の地域で生産された発泡性ワインは、フランス産といえど、Champagneとは呼んではいけないことになっています。

Champagne地方以外でも、発泡性ワインは生産されています。それでは何て呼べばいいのでしょうか。フランス語では、ヴァンムースー(Vins Mousseux)と言います。これを知っていれば、やや知ったかぶりのお客様にも対応できます。

Mousseuxは、整髪料のムースと同じで、"泡"の意味です。したがって、Vins Mousseuxは"泡のワインということになります。

 


 

シャンパンの注ぎ方

お客様の目の前で、シャンパンを注ぐときは、「糸を引くように・・・」と習ったと思います。そうすれば、泡があふれることはありません。その代わり多少時間がかかります。また、お客様の目前でシャンパンを注ぐとき、ボトルがグラスに触れないようにします。

Welcome Champagneのように、10人分20人分をGalley内で急いで準備しようとすると、早く注ぐためたいてい泡立ってしまい、かえって時間がかかってしまうことがあります。

Champagneの泡の特性を覚えておいてください。Champagneの泡は、いったん泡立ちがおさまると、勢いよく注ぎ足しても、少ししか泡立ちしません。したがって、最初に数個から10個のグラスに、約1/4ほど注ぎます。泡立ててもかまいません。次から次へと1/4ほど注いでいきます。そのうち最初に注いだChampagneは泡がおさまっています。泡がおさまっているグラスにChampagneを注ぎ足していきます。これでChampagneを短時間で用意できます。お客様の前で注ぐときも、少し注いで、泡が落ち着いたら残りを注ぐとよいです。

 


 

甘口・辛く口

Champagneボトルのラベルに下記の文字が記載されています。

Champagneの甘い、辛いは瓶詰されるときに、加えられるリキュールの糖度によって決まります。

 


 

ブランディ(Brandy)

ブランディが、初めて製造されるようになったのは1630年と言われています。ちょうど太陽王ルイ14世のベルサイユ宮殿華やかしき頃です。この年にぶどうが生産過剰となり、しかたなく余ったワインを蒸留してみたところ、とても好評だったので、以降ブランディづくりをするようになりました。そして、1700年代に入り、製造が本格化しました。

 


 

Cognac地方のブランディ

コニャック(Cognac)地方で生産されたブランディのことを、コニャックと呼びます。フランスの法律で、コニャック地方以外で生産されたブランディをCognacと呼んではいけないと決められています。したがって、アメリカ製や日本製のCognacはありません。サントリー社も、ブランディを販売しています。あくまでもブランディとして売っています。

それでは、フランスでは、Cognac地方以外で、ブランディを生産していないでしょうか。Cognac地方以外では、アルマニャック(Armagnac)地方が、ブランディの生産で有名です。それ以外の地方でも生産しています。

"Brandy"は英語です。コニャック地方、アルマニャック地方以外で生産されたブランディは、フランス語で何というのでしょうか。"Eau de vie"(オードゥヴィ)と言います。意味は「命の水」です。

したがって、コニャック地方でとれたブランディのことを、フランス語では、 "Eau de vie de vin de Cognac"(オードヴィドゥヴァンドゥコニャック)です。「コニャック地方のワインで作られた命の水」となります。

また、ブランディ(Brandy)は、"Eau de vie"の英語訳です。

Cognac=Brandy=Napoleon ?

バーやクラブで、「今日はナポレオンにしよう」と注文している客がいます。ブランディと言えばナポレオンだと思っているのでしょう。

"カミュ社Napoleon"は、"コニャック"であり"ブランディ"であり、"ナポレオン"です。それでは、ファーストクラスに搭載されている"ヘネシー社XO"は、コニャックであり、ブランディであり、ナポレオンですか?

"ヘネシーXO"は、コニャックであり、ブランディです。しかし、ナポレオンではありません。XOです。

 


 

スコッチウィスキー(Scotch Whisky)

ロンドン基地CAのリカーサービス(Liquor Service)の授業で、それぞれの酒の生産国を説明していた時、Chivas Regal は英国産だと言おうとして、英語で、

「Whisky of England」 

と言ったところ、スコットランド出身の訓練生に、

「Chivasは、EnglandでなくScotland産です」

と反論されたのを覚えています。その訓練生の言うとおりで、たしかに"Scotch"というくらいですから、Scotland産です。もし、"英国の"と言うのであれば、"British Whisky"といえば、反論されずに済みました。

 


 

Jack Daniel'sはバーボンウィスキー?

お客様から、バーボンウィスキー(Bourbon Whisky)のRQがあった場合、Jack Daniel'sを提供するように言われていました。実は、当時、私たちの機内には、バーボンウィスキーは搭載されていませんでした。そのため、同じとうもろこしや大麦を原料としているJack Daniel'sを勧めました。

バーボンウィスキーは、ケンタッキー(Kentucky)州で生産されたウィスキーです。ところが、Jack Daniel'sは、となりのテネシー(Tennessee)州で生産されています。原料は同じですが、ろ過するときに使用する炭が違うそうです。テネシーウィスキーはサトウカエデの炭でろ過します。

 


 

Bourbonはブルボン

バーボンウィスキーの生産地は、米国ケンタッキー州です。バーボンウィスキーの 「Bourbon」をフランス語読みにしてみてください。”ブルボン”となります。アメリカがイギリスからの独立戦争のとき、フランスはアメリカ側を応援しました。その感謝のしるしとして、ケンタッキーの一つの郡をバーボン郡を名付けました。時は、ブルボン王朝ルイ16世とマリー・アントワネットのころです。

 


 

ジンとニック

ある新人CAが、飲物サービス中、Liquorカートの中を覗き込み、何かを探しているようす。先輩が聞くと、

「ニックが見当たらないんです」

だれがこの訓練生を担任したのか知りませんが、教官が説明したとき、たぶん、その訓練生には、「ジンとニック」と聞こえたのでしょう。「ジントニック」は日本語です。英語では「Gin and Tonic」と言います。英語で教えておけば、この訓練生は恥をかかずにすんだのに・・・。

 


 

ジン(Gin)は利尿剤

1600年代半ばに、オランダライデン大学教授が作り出したもの。初めは、利尿・健胃効果がある薬用酒でした。ジンの独特の臭いは、ジュニパーツリー(Juniper Treeねず杜松)の香料が入っているためです。Juniper Treeの実からとれる杜松油は利尿剤の原料になっています。

ジンは、最初にオランダで生産されました。その後、1600年代後半には、イギリスでも作られるようになりました。1689年に、オランダのウィリアム3世がイギリスに迎えられて王位を継承しました。このときに、オランダからジンを持ちこみ、イギリスでも普及させました。その後、イギリスではブリティッシュタイプ(British Gin 別名London Gin)が発展しました。したがって、現在では、ブリティッシュタイプとオランダタイプの2種類に分かれます。

 


 

ウオッカ(Vodka) = 水?

ウォッカもジンも、原料は大麦、ライ麦、馬鈴薯、とうもろこしです。最近のウォッカは、馬鈴薯やとうもろこしが主流になっています。

ウォッカは、元来、ロシアの国民酒でした。有名なものにストリチナヤ(Stolichnaya)があります。戦後、アメリカに渡った亡命ロシア人の手で、アメリカでも生産されるようになり、それが世界に広がりました。スミルノフ(Smirnoff)は、アメリカで有名になったウォッカです。ウオッカの呼称は、ロシア語のVoda(水)からきています。その昔は、農民たちの地酒の一種でした。19世紀の帝政時代には、上流階級も愛飲する飲物になりました。

 


 

ブラディマリー(Bloody Mary)物語

イングランドのヘンリー8世(在位1509~1547)は、自分の離婚のために、ローマ教会から当時のイングランドを離脱させ、独自に英国国教会を作ったことで有名です。また、自分の世継ぎが生まれないので、6人も王妃を代えた王としても有名です。不義の罪をでっち上げられ処刑された王妃もいました。最初の王妃であるキャサリンは7人も子供を産んだのだが、メアリーだけが無事成長しました。男の子を、もはや期待できなくなったヘンリー8世は、宮女であるアン・ブーリンと愛情関係になりました。まもなくアンは、「不義の子」を生むことになるのですが、この子がのちのエリザベス1世です。

3番目の王妃になってやっと王子が生まれ、ヘンリー8世没後は、この王子がエドワード6世として、王位につきました。ところが、虚弱であったため26才で没してしまいました。

そこで、王位継承権2番目のメアリー(Mary)が女王として王位に就きました。このメアリーは、狂信的なカトリック教徒でした。当時、すでに宗教改革が終わり、イングランドはプロテスタント(新教徒)が主流の国になっていました。メアリーの母親キャサリンは、スペイン出身でしたので、メアリーもスペインと組み、イングランドを元のカトリック教国に戻すために、プロテスタントを徹底的に弾圧しました。多くの新教徒たちが、この王妃によって処刑されたため、プロテスタントたちは、彼女のことを「流血のメアリー」と呼びました。

メアリーが1558年に没すると、エリザベスが女王になり、父親が手がけた宗教改革を再度推進し、プロテスタント化を確立しました。

カクテルのブラディマリー(Bloody Mary)は、この歴史的背景から、プロテスタントの子孫たちが、この残忍な女王メアリーのことをいつまでも忘れないためにつけた名前なのです。

 


 

ブラディマリア(Bloody Maria)

Maryをスペイン語読みにするとMariaとなります。ブラディマリーはウオッカとトマトジュースですが、メキシコでは、ウォッカの代わりに、テキーラを使いカクテルを作りました。それをブラディマリーの名をもじり、ブラディマリアとしました。

 


 

ジョークの好きなアメリカ人

アメリカ人:「Give me Virgin Mary, please」

   OJT:「Virgin Mary ?」 

Virginと聞いて顔を赤くしながら、心の中でつぶやく 、

"どうしよう。そんなカクテル訓練部で教えてもらわなかった!"

アメリカ人:「Yes, Virgin Mary, please!」

    OJT:「・・・・」

アメリカ人:ウィンクしながら、「Oh, you don't have Virgin Mary.
      Then, do you have tomato juice ?」

   OJT:「Yes, Yes.」 

"なんだ、トマトジュースが欲しいんなら、そう言えばいいのに!"

Virgin Maryは、Vodka抜きのBloody Mary=Tomato Juiceのことでした。

 


 

サービスは謙虚に

ビジネスクラスでの出来事です。Liquoサービスの時、お客様が、「ハイボール」を注文しました。そのCAは、自身たっぷりにウィスキーをトニックウォーターで割り提供しました。一口飲んだお客様は、味が変なので、CAに、

「これはハイボールではないよ」

と言うと、そのCAは、

「お客様、これがハイボールです。訓練で習いました」

と答えてしまいました。

 


 

ハイボール考

最近、日本では、ウイスキーが復活してきています。ウィスキーメーカーの宣伝もあり、ハイボールを飲む人が増えています。ところで、皆さんは、機内で、お客様からハイボールのオーダーを受けたら、どのウィスキーをソーダで割って調製しますか。スコッチ系ですか。バーボン系ですか。

ハイボールの名前の由来には、2、3の説があります。アメリカに大陸横断鉄道ができた頃の話です。蒸気機関車には、設備がある駅で給水を行なっていました。その駅には、遠くから分かるように高いポールが掲げてありました。その先端にはボール状のものがついています。そして、給水している間、旅客にはバーボンウィスキー&ソーダがサービスされていました。旅客はポールが立っている駅に着くのを楽しみにしていました。これがアメリカ横断鉄道説です。

もう一つに、スコットランドゴルフ場説があります。スコットランドのゴルフ場で、当時珍しかったウィスキーのソーダ割りを試している所へ、高々と打ち上げられたゴルフボールが飛び込んできて、「これがハイボールだ!」と言ったという説です。ウィスキーがアメリカに渡る前の話です。サントリー社は、こちらの説を使ってスコッチウィスキーを使ったハイボールを宣伝しています。

日本で、「ハイボール」を注文すると、スコッチウィスキーのソーダ割りが提供されることが多いかもしれません。実は、「ハイボール」は、お酒(スピリッツ)を清涼飲料水で割り、ロンググラスを使用して作るカクテルの総称です。ウィスキーのジンジャーエール割りも、コーク割りも、ジントニックも、ハイボールの一種となります。また、ウィスキー・ソーダにしても、アメリカ人は、アメリカのバーボンウィスキーをソーダで割ったものをハイボールと呼ぶかもしれません。欧米のバーで、これらのカクテルを注文するときは、「Scotch & Soda」とか「Bourbon & Soda」とか、どのウィスキーで作ってほしいかを伝えます。「スコッチ・ソーダ」だけがハイボールではないことを覚えておいてください。そして、焼酎バイボールを「酎ハイ」と呼んでいますが、これも焼酎を清涼飲料水で割ったものです。

 


 

お客様も教官

お客様は、ワインリストにないカクテルを注文することがあります。私たちは、訓練で、料理やお酒の勉強をしました。しかし、新人の時に習ったものは、基礎的なことばかりです。お客様が、自分(Crew)が知らない名前の飲物を注文したら、すぐに「ありません」というのではなく、レシピーを聞いてみてください。機内に搭載されているもので、作れるかもしれません。そして、サービスには、お客様に勉強させてもらう位の気持ちの余裕が必要です。

 

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