キャビンアテンダント(CA)就職事情 2017〜2018年
CA就職事情
JALやANAは、傘下の航空会社を多く抱えていたが、リーマンショック後、統合が行われた結果、現在JALグループは5社、ANAグループは3社となっている。JALウェイズ社、エアーニッポンはそれぞれの親会社に統合された。また、エアーニッポンネットワーク、エアーネクスト、エアーセントラルの3社も統合され、ANAウィングとなった。そして、スカイマーク、エアドゥなど独立系の航空会社が8社ある。さらに国内LCCが5社となっている。国内だけでも、16000人以上のCAが乗務している。
一方、日本人CAは、国内のみならず、アジア系、中東系、オセアニア系、欧州系、米国系航空会社と、外国の航空会社でも活躍している。日本人CAを採用している海外航空会社は、55社にも上っている。エミレーツ(EK)300名前後、キャセイパシフィック(CX)200名前後のように大量の日本人CAが在籍する会社から10数名の会社までさまざまである。外資系航空会社に所属している日本人CA数は、2000名前後(推定)になる。
そして、2017年は、国内系航空会社で28回、外資系航空会社で19回のCA募集ならびに採用試験が行なわれた。国内・外資合わせて1400〜1500名のCAが新たに誕生している。ただし、外資航空会社の日本人CA採用数は減少傾向にある。
海外・国内経済 2018
日本経済は海外経済の拡大や内需の堅調な推移から景気は回復基調にある。
2017年は企業部門を中心に、内需の回復力がより鮮明になってきている。2017年度の成長率見通しも+1.9%と上昇してきている。
2018年度は、IT部門や中国経済の回復ベースの鈍化に伴い輸出が減速するものの、五輪関連や生産性向上投資に支えられて設備投資の緩やかな回復が続く見込み。個人消費は、エネルギー価格の上昇が実質賃金の下押し要因となるものの、中小企業を中心とした賃上げの効果などから、底堅い推移になると予測している。
2019年度は、10月の消費税率引き上げが成長率を小幅に下押しし、成長率の鈍化が予測される。また金融市場発の下振れリスクのほか、中国の構造改革の舵取りや米国の通商政策、北朝鮮情勢などに注意が必要となる。エネルギー価格の前年比プラス幅が拡大する可能性がある。
(参考) みずほ総合研究所
世界の航空需要 2018
旅客数は2017年と比べて6.0%増の43億人を見込む。これを受け、総収入は9.4%増の8240億ドルと予想。営業利益率は0.2ポイント低下して8.1%となる見通しだが、純利益率は0.1ポイント改善して4.7%を見込む。貨物量については、4.5%増の6250万トンと予想している。
一方、旅客数と貨物量の伸び率については、旅客が2017年の7.5%増に対して2018年は6.0%増、貨物は9.3%増が4.5%増と、ともに需要の減速を見込んでいる。有償旅客の輸送距離を示すRPK(有償旅客キロ)は比6.0%増、座席供給量を示すASK(有効座席キロ)は5.7%増、ロードファクター(座席利用率、L/F)は0.2ポイント上昇し81.4%を見込む。
原油価格は10.7%増の1バレル平均60ドル、ジェット燃料価格は12.5%増の73.8ドルを予想。コストに占める燃油費の割合は1.7ポイント上昇し20.5%を見込む一方、人件費は30.9%と燃油費を上回ると予測している。
(参考) IATA需要動向予測
超長距離便の増加
従来、アジア諸国からアメリカに旅行する場合は、シンガポール→羽田(成田)→ニューヨークのように、日本でアメリカ行の飛行機に乗り換えていました。飛行機の性能がよくなるにつれて、アジア諸国からノンストップで目的地まで直行する便が増加しています。飛行時間17時間前後のフライトが増えています。シンガポール→ニューヨーク便では18時間45分の飛行時間になります。これら超長距離便乗務では、パイロットやCAたちにとっては、20時間以上の勤務となります。
(参照) 塾長雑学講座「世界最長フライト」
訪日客の動向
2017 年の訪日外客数は前年比19.3%増の2,869万人で、JNTO が統計を取り始めた1964 年以降、最多となった。航空路線の拡充やクルーズ船寄港数の増加、査証要件の緩和に加え、これまでの継続的な訪日旅行プロモーションなど、様々な要因が訪日外客数の増加を後押ししたと考えられる。
市場別では、主要20 市場全てで過去最高を記録。中でも、韓国(714 万人)と中国(735万6千人)は全市場で初めて700 万人台に達したほか、これに台湾と香港を加えた東アジア4 市場は、前年比21.9%増の2,129 万人となり、訪日外客数全体の70%以上を占めた。また、ロシアでは年初の査証要件緩和の効果が大きく、前年比40.8%増と高い伸びを示した。
(参考) JNTO日本政府観光局
日本人海外旅行者数
2017年に出国した日本人数は1788万人(前年1711万人)とやや増加した。日本人の海外旅行者数は、2012年の1849万人をピークに、その後は、1700万人前後で推移している。日本の人口減や可処分所得の伸び悩みなどがあり、日本人旅客数の大きな伸びは期待できない状況となっている。JAL、ANAの経営戦略にも影響を与えている。
日本乗り入れ海外航空会社
訪日外国人の増加に伴い、日本の各空港に乗り入れている海外航空会社は約80社になる。内訳は、アジア系航空会社が44社、インド・中東・極東系10社、北米系6社、オセアニア系6社、ヨーロッパ・アフリカ系15社となっている。そのうち15社がLCCである。これに加え、国際線を就航している国内航空会社は、JAL、ANAをはじめ、ピーチ、バニラ、ジェットスタージャパン、春秋航空日本、エアアジアジャパンがあり、航空会社間の競争は激化している。日本の表玄関となった東京国際空港(羽田)には、外国航空会社35社が乗り入れている。
就活解禁日 (2019年入社新卒)
2016年の8月就活解禁方針は、真夏の暑い中を黒系のリクルートルックで汗をふきふきとなった。また、外資系やIT系企業など経団連非加盟企業は、それより早く採用活動を開始したため、学生たちは長期間にわたって就活をしなければならなかった。また、外資系企業に優秀な人材を確保されてしまうなど、経団連加盟企業にとっても採用活動に支障が出た。それらを踏まえ、2017年の新卒採用は、2ヶ月早まり6月1日が解禁日となった。2018年も同様の措置がとられている。そのため、3月に入ると、採用試験内容が一斉に発表され、企業説明会などが活発の行われた。
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2018 |
2017 |
2016 |
JAL |
650名(新500既150) |
475名(新400既75) |
400名(新350既50) |
ANA |
680名(新600既80)0 |
600名(新550既50) |
740名(新700既40) |
*新卒内定者の入社は翌年4月以降
*JAL新卒2016 募集350名⇒内定者371名
*2018年ANA既卒 ANAグループ社員向け別途募集あり
*2018年JAL新卒 募集500名⇒内定者数560名
*以上はスチュワーデス塾で把握している数値
*過去の募集人数一覧
2020年入社 JAL・ANA新卒 採用人数 2019.03.01発表
ANAの新卒採用
2017年(2018入社)に行なわれた新卒採用では、募集人数は550名だった。2018年の募集では、50名増え、募集人数は600名となっている。ここ数年、同社での新卒募集は600名前後で推移している。2016年初頭には、今後3年間、新卒・既卒合わせて毎年1000名のCAを採用すると発表していた。しかしながら、既卒も併せた採用数が少なくなっている。同社は多くの新規路線を開拓し開設してきた。それらが一段落し、さらなる新路線の開設には時間がかかりそうである。それに伴いCAの採用数も抑制気味になっているようだ。また、CAの正社員採用に方針を変更したため、離職率が下がっていることも考えられる。
JALの新卒採用
330名(16年入社)、350名(17年入社)、400名(18年入社)と、新卒採用人数を増やしてきている。2018年採用(19年入社)では500名とさらに増やしている。それでも、新卒・既卒合計人数では、ANAの2/3の人数となっている。同社は、会社再建にあたって、政府の支援を受けたため、2017年3月末まで自由に路線を開設できなかった。また、羽田新規発着枠でもANAの半分以下しか割り当てられなかった。これらがCAの採用数にも影響していた。2017年4月にこの制約が解除されたため、新規路線の開拓や増便を行なえるようになった。そのような背景のもと、CAの必要数も増えてきている。
JAL客室乗務員の仕事紹介(動画)
ANA・JAL既卒採用
両社とも新卒CA採用では一定人数を採用している。その一方で、既卒採用数は、一時に比べ極端に少なくなっている。2016年の採用では、ANAが40名に加えて他社国際線乗務経験者枠採用の若干名であった。JALは50名のみの採用だった。ANA・JALでは、従来、新卒採用が中心となっている。毎年4月の新年度スタートに備え、必要なCA数は確保している。
しかしながら、期中に、予測以上の退職者や産休者や長欠者が出たり、あらたな路線や便が増えたりすると、CAの補充を行なわなければならない。そこで、既卒募集をかけることになる。2018年のANAは、新規路線が落ち着いていることや新卒採用人数も平年並みとなっていることから、既卒採用での採用数は、前年並みになりそうである。JALは新規路線の増加次第では既卒採用が期待できる。両社のあらたな事業計画が発表されたら、目を通しておくとよい。路線や便数の増加を予定しているかどうかが分かる。
男性客室乗務員
男性CAを採用している航空会社は少なく、現在乗務している日本人男性CAは、国内・海外合わせて100名にも満たない。国内ではADO、SNJ、SKY、外資ではFIN、SAS、LH、CX、EY、EKなどで乗務している。ANA、JALでも、何年にもわたり男性CAを採用していない。その結果、女性特有の職場になり、機内サービスも女性中心の発想で行なわれたり、マニュアル至上主義に陥ったりしている。世界中、どの航空会社も男性CAが乗務している。ANA・JALのみがプロパー男性CAを採用していない。そのため、現役CAたちから話を聞くと、職場はカサカサし、うるおいがなくなっている印象を受ける。女性CAにうるおいを与えるためにも、また男女雇用機会均等の観点からも、男性CAを採用すべきである。
現場からの報告では、JALグループでは、2017年入社のCA訓練生の中に、ほんのわずかであるが、男性が混じっていたと聞いている。
CA採用状況(ヨーロッパ゚系)
日本がバブル時代は、外資系航空会社にとって、日本人はよいお客様であった。日本人旅客獲得のために、日本人CAを乗務させ、機内でも日本語が通じるようにしてきた。ヨーロッパ系航空会社も、大いに日本人CAを採用していた。現在、ヨーロッパ系航空会社の目は、海外旅行者が増えている中国に向いている。日本人CAより中国人CAを多く採用している。中国線に力を入れているためである。
欧州の航空業界は、ルフトハンザドイツ航空グループ、英国航空グループ、エールフランス・KLMオランダ航空グループの3大航空勢力となっている。そのうち、スイスインタナショナル航空、オーストリア航空を傘下に収めたルフトハンザドイツ航空グループが利益を出している。一方、アリタリア航空の苦境が伝えられている。
ヨーロッパ系航空会社の日本人CA採用は、昔に比べとにかく少なくなっている。エールフランス、ブリティッシュエアウェイズ(英国航空)、ルフトハンザドイツ航空は、日本人CAが必要になると、EU内にいる日本人に募集をかけ補充している。ルフトハンザはときどき日本でも募集を行うこともある。日本人CAの所属基地が日本にあるフィンエア、KLMオランダ航空、アリタリア(機内通訳)は、日本人CAの基地が日本国内となっているため、日本で採用を行なっている。ただし、これら3社での採用は、乗務経験者中心となっている。アリタリアは経営破綻の処理次第で、日本人CA採用に影響が出ている。昨年に引き続きKLMオランダ航空が3月に募集を行っている。
CA採用状況(アジア系)
2017年に、大手航空会社で、日本人CAの採用を行なったのは、シンガポール航空、エバー航空(台湾)、中国国際航空、中国東方航空ぐらいだった。タイ航空、大韓航空、アシアナ航空、マレーシア航空、キャセイパシフィック航空、ベトナム航空では、日本人CA募集がなかった。
シンガポール航空は、この5年の間、毎年、日本人CA募集を行なってきた。例年、年初に採用を行なっていたが、2018年は5月時点でCA募集が出てきていない。
2018年に入り、キャセイパシフィック航空が7年ぶりに日本人CAの募集がかかった。経営状態がきびしいことでCAの採用を抑えてきていた。香港では住居費が異常に高いため、会社は外国人CAに対して住居費補助を行なってきたが、これを中止することとなった。その影響で、日本人CAの退職が増えたことも、今回のCA募集につながっている。
どの会社も、経営が厳しい状況が続いている。リストラが進まないタイ航空、LCCエアアジアの攻勢にさらされているマレーシア航空、燃料コストの上昇と運賃低下で苦労しているシンガポール航空、中国航空会社の攻勢や上級クラス旅客の減少で苦しんでいるキャセイパシフィック航空、経営者一族の振舞いで問題を抱えている大韓航空、経営再建に取り組んできたアシアナ航空など、いずれの会社も経営改善を迫られている。
加えて、アジア系航空会社の日本線では、一昔前の機内は、日本人旅客だらけだった。現在は、日本人旅客がまばらなフライトも多く、ときに日本観光を楽しむ本国人旅客だらけというフライトも多く見られる。本国人旅客が多くなれば、その分、日本人 CAの必要性が少なくなる。
外資航空会社は狭き門
そのような意味では、全体的に、採用人数が少なくなっているので、以前に比べ、外資航空会社で乗務したい人たちにとっては狭き門になりつつある。ちなみに、中近東系のエミレーツ、カタール航空も、採用回数が多いものの、補充程度の採用人数となっている。外資航空会社をめざす方は、準備を怠らないようにする。まずは英語力アップから始める。
(参照) キャビンアテンダント募集時期一覧
カタール孤立
カタール国がイランとの関係強化を図ったり、テロ組織を支援しているという理由で、サウジアラビア、バーレーン、エジプト、UAEは、2017年6月に、同国と国交を断絶し、陸路、空路、海路を遮断した。カタール航空は、これら諸国に運航していた約50便の運休を余儀なくされている。それに伴い、売上の30%に影響が出ると言われている。CAにも余剰が出るため、採用にも影響が出てくる。
CA採用状況(米国系・豪州系)
日本発着の米国系航空会社は、アメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空、ハワイアン航空である。以前運航していたコンチネンタル航空はユナイテッド航空に、ノースウェスト航空はデルタ航空と合併している。その中でも、ハワイアン航空が元気である。ハワイ・日本路線では、JALより旅客を多く運ぶまでになった。2017年に入って日本語スピーカーの増員を決めている。
米国系航空会社では、日本語スピーカーの本国採用を行なっている。やはりグリーンカード所持者のみ応募可となっている。以前に採用された日本基地所属の日本人CAは、現在も乗務しているが、今後、日本国内での採用は期待できない。
同様に、オーストラリアのカンタス航空、ニュージランド航空も、日本人が応募する場合は、永住権を取得している必要がある。
(詳細) 「キャビンアテンダント募集要領一覧」
人材確保に苦労
2018年も、CA希望者にとってはラッキーな年になりそうである。実は、国内航空各社採用担当者は、良質な人材確保にしのぎを削っている。また苦労している。企業景気がよいこともあり、一般企業でも採用を増やしている。新卒の就職率も、2018年卒業の大卒の就職率は98%(日経5/18))に達している。その中での、良質なCAの確保は困難を極めている。大学での就職セミナーを活発に行い、応募を促進している。CAに適した人材がいると、個別にコンタクトをとっている航空会社もある。応募者が5000人であろうと、10000人いようが、語学力があってCA適性を備えている人材は、毎年500人もいないのが実情である。ところが、ANA/JALだけで、1100人の新卒CAが必要なのである。両社では少しでも質のよい人材の確保に躍起になっている。
CA定年延長案
2018年5月のNHKニュースによると、ANA・JAL両社では、人手不足対策として、ベテランCAの定年延長を検討しているとのことである。また、社内でもそのうわさが流れている。
CA受験生へ
大手航空会社のCA内定者を見ると、90%近くが大卒となっている。CAへの近道は、まずは大学に進学することと言える。そして、大いに勉強し教養を高め、部活などで人間関係やコミュニケーション能力を高める。そして、大人の女性になるために、自分をしつける。その部分を怠り、スクールに行けばなんとかなるという考えでは、CAになる夢は遠のいてしまう。
日本の航空会社は、ますます外国人旅客が増えていく。外国人旅客とのスムーズなコミュニケーションが求められる。基本となるのは英語である。私は中国語ができるとアピールしても、英語ができなければ採用されない。英語ができてはじめて中国語能力が生きてくる。なぜなら、CAは中国便だけでなく、世界中を飛ぶからである。語学力がある受験生が少ないのが現状なので、その努力をするだけでCAに一歩近づくことになる。また、言葉を知るだけでなく、外国の文化を勉強してみる。具体的な英語力については「塾長だより」を参照してほしい。
反対に、海外生活が長かった人の中には、語学力や異文化対応力があるが、日本人としての一般教養が足りないケースも見られる。たとえば、日本の高校を卒業後、アメリカの大学で勉強している学生さんとメールでやりとりすると、時候の挨拶なども含め、日本語が高校生レベルでとどまっている人を見かけます。特にJALは一般教養も重視している。長期に活躍できるは、知識の吸収を怠らない人である。
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