文書作成講座

 

新聞はなぜ読みやすいか

 

新聞には、文字がぎっしりと書かれています。しかし、誰も、新聞が読みづらいと思いません。皆さんの職場で配布される、社内情報や業務指示文書は読みやすくなっていますか。筆者が在籍していた会社では、Crewのメールボックスに、会社情報が配布されていました。この資料は、一行の幅が広く、文章自体も長くて、あまり読む気になりませんでした。一度読んだだけでは、何が書いてあるのか、頭に入ってこないからです。

今度、新聞の一段落の文字数を、数えてみてください。新聞社によって多少違いますが、一段13文字前後です。その幅は、32mm前後です。この文字数と幅が、新聞を読みやすくしている理由のひとつです。

 


ひとみが動かない

 

新聞を読んでいるとき、ひとみはあまり動いていません。新聞は、ひとみを動かさなくても読めるよう、一段の幅を小さくしてあります。

ところが、社内文書などで、A4版横サイズ紙面に、文字が横に長く書いてあることがあります。読み手側は、一行読むのに、ひとみを左から右へ動かさなければなりません。下手すると、首まで左から右へ振ることになります。 ひとみキョロキョロ、首フリフリさせるようなものは、読んでいて嫌になる文書です。

PC画面で見ると、企業や個人のホームページでも、一行の横幅が長く、画面の左側から右側まで使っていることがあります。やはり、読むのが嫌になります。一方、たいていのブログページは、文章を書き入れる部分は幅が狭くなっています。ひとみキョロキョロさせずに読めるようにできています。両側に広告を入れるというブログ提供企業の事情もありますが・・・。

 


文書は読ませるな

Crewも、ベテランになれば、報告書を書く機会も増えてきます。読みやすい、分かりやすい報告書を書けるようになってください。

文書(特にビジネス文書)は、読んでもらうために書くのですが、読ませてはいけません。見ただけで、何が書いてあるのか、分かる文書づくりが必要です。そのためには、

*余白をうまくとる
*センテンスを短くする
*読ませる文字をなるべく少なくする

などの工夫が必要です。

 


左側余白はファイル用

 

PCで作成する社内文書は、文書ファイルに保存しておくことが多いものです。左側余白が少ないと、開けた2穴に文字がかかってしまいます。さらにファイルされた書類をめくって読むとき、余白が足りないと、左側の文字が読みにくくなります。そのため、左側余白は、右側より、やや幅を広くとります。

 


センテンスの長さと呼吸

 

社内文書を読んでいると、なんだか、そこに書かれた文章が頭に入らないと感じるときがあります。センテンスの長さと、呼吸が合っていない時がそうです。 

センテンスが長すぎると、読み手はなかなか一息入れられず、苦しいまま読み続けることになります。息が苦しいから、文章の内容が頭に入ってきません。呼吸が合わない文章も、読みづらい文章です。

 


句読点の打ち方

 

読んでいる途中で、呼吸を楽にしてもらうのが句読点です。特に、読点「、」の少ない文章は、読みにくいと言えます。その典型が、学者の書く論文です。また、文章を書き始めの人も、「読点」を入れるのが下手です。

呼吸に合ったセンテンスの長さは、だいたい15文字以内です。一つの文が15文字近くなったら、「読点」を入れます。

A. 新聞には文字がぎっしりと書かれています。
  読点がなく、19文字になっています。息もつかずに、イッキに読まな
    くてはなりません。
B. 新聞には文字がぎっしりと、書かれています。
    読点が入っていますが、Aと同様、イッキに読まなければならないよう
    な読点の入れ方です。
C. 新聞には、文字がぎっしりと書かれています。
  「新聞には」で、いったん呼吸を整えさせ、次を読む準備をさせている。
D. 新聞には、文字がぎっしり、と書かれています。
    違う意味になってしまう。
E. 新聞には、文字が、ぎっしりと書かれています。
    前後の文章との関係や著者の好みで、「文字が」の後に、「読点」を入
    れることがあります。

読んでみて、どの文章が、呼吸しやすいですか。意味が素直に入ってきますか。

 


体現止めと句点

 

ビジネス文書では、

*文章になっている部分では、体言止めをしないのが基本です。

*体現(主に名詞)で文を止める「体現止め」の文末には、句点を用いないの
   一般的です。
*体現止めの文章が連続する場合には、その間には句点を入れ、後の文章の

 末尾には入れない使いかたもあります。

分かりやすい技術文書・ビジネス文書の作成手法」より

旧JALエクスプレス社のCA募集要領では、

となっています。ビジネス文書ですので、体現止めが多く使われています。この募集要領では、末尾に、句点を打ったり打たなかったりしています。句点があったりなかったりで、わずらわしい文書になっています。このような羅列の書き方のときは、余計な句点は外したほうが文書がスッキリします。

さらに、カッコ内の文書の終わり(・・・。)の句点も、打ったり、打たなかったりしています。(後述参照)

外部に文書を出すときは、社内文書規定をしっかり勉強して、恥ずかしくないものを掲載する必要があります。

 


一つの文を短く

 

- とにかく文章は短くしろ- 

当時、CAたちは、乗務前に、業務の変更がないか掲示板を確認していました。筆者は、その掲示文書を書く仕事をしていました。CAたちは乗務前にあれこれ準備があり、忙しい中、掲示板を確認するのです。「業務指示文書は完結に書け」、そのとき、いつも上司に言われた言葉です。テンポよく読める文章は、句点「。」から次の句点「。」までを短くしてある文章です。(現在は、その掲示文書は各CAのIPadに送られてきます)

一方、文章が長いと、何が言いたいのか、ボヤけてしまいます。

『わが社は、よい会社であるが、最近は、給料は下がるばかりで、仕事もきつくなってきている』

この文では、「よい会社」「給料が下がる」「仕事がきつい」の3つの内、どれが言いたいのが不明瞭になってしまいます。  

『わが社は、よい会社です。しかしながら、最近は、給料は下がるばかりです。仕事もきつくなっています』

というように、「よい会社です」で、いったん文章を切るとスッキリします。さらに、テンポよく読めます。また、内容も頭に入ります。

 


カッコ内は句点不要

 

文章を引用したり、会話体にしたりするとき、カッコ記号を使います。かぎカッコ内の終わりに、句点「。」が入っている文を見かけます。このとき、句点を入れないのが基本です。「」が句点の代わりを果たします。一方、カッコ前に読点「、」を入れると、読み手が一呼吸できますので、カッコ文が読みやすくなります。また、視覚的にも、読みやすくなります。

今日、教官から「全員、訓練合格です。」と言われました。

今日、教官から、「全員、訓練合格です」と言われました。

(カッコ前に読点を入れます)

 


漢字とひらがなの割合

 

漢字が多いと、その文章は、硬い印象を与えます。反対に、ひらがなが多いと幼稚に見えます。

文章の中で、漢字の割合が5割を超えると硬い印象になり、3割以下だと幼稚に見えます。漢字が4割前後の文章が、読みやすいと言われています。文章を作ったら、漢字とひらがなの割合を、数えてみてください。漢字の割合が5割近くあったら要注意です。ひらがなで書いても問題がないところは、ひらがなにして調整します。文書の最後で調整する方法もあります。例えば、

「~お願い致します」⇒「~お願いいたします」

というようにします。

 


漢字はキーワード

 

やたらと漢字を使わない理由がもうひとつあります。多くの日本人は、文章を読むとき、目で漢字を拾います。そして、それをキーワードにして、その文章の意味を理解します。文章の中で、キーワードにならない漢字を多用すると、大切な漢字の邪魔をすることにもなります。

接続詞・副詞・連体詞・助詞・助動詞などはかな書きにしてみる。

 


文書を書いていない人

 

CA受験生のエントリーシート(ES)を添削していると、普段から文章を書いている人かどうかすぐに分かります。句点の打ち方や漢字の使い方が違うのです。日々、あまり本や文章を読んでいないこと(=勉強不足)が分かります。

また、最近は、PCで作成することが多くなっています。手書きだったら、書かない、もしくは書けない字まで、漢字変換しています。たとえば、「すてき」はどうですか。自分のノートや手帳に「素敵」と書きますか。「宜しく」を、普段、漢字で書きますか。

本や雑誌を読むとき、句点や漢字・ひらがなの使い方を意識して読んでみてください。

 


意味による使い分け

 

*「事」と「こと」
(A) 事の発端は、思いもしないミスであった
(B) 考えてみたこともない
*「時」と「とき」
(A) 時には朝早く起きて、散歩でもしたいものだ [ある時期・時点]
(B) 親孝行、したいときには親はなし [状況・仮定・条件]
*「所」と「ところ」
(A) カメラに向かって立つ所を決める [場所・位置]
(B) 意思の疎通がないところに、失敗の原因があった [状況・理由]
*「物」と「もの」
(A) 物をなくしてしまった [具体的な物品]
(B) 正しいものかどうか分からない [抽象的な存在]

成川式「文章の書き方」より

 


Eメール、SNS掲示板での文章

 

インターネットの時代になり、仕事以外でも、文章を書く機会が増えました。特に、メールやSNSへの書き込みは、多くの人が読みます。読み手のために下記の点に注意しましょう。

  • 一行30~35文字くらいで改行すると読みやすい (横幅が広がらないために)
  • 改行するのを忘れない
  • 適度に1行段落をあける(空白をとる)
  • 改行方法…Enterキーを押す

 


平易な文章

 

再度読まないと理解できない文章は、大学教授にまかせましょう。文章はできるだけ平易に書くことが大切です。とくに、不特定多数の人たちに読んでもらう場合は、なおさら重要です。

文章に箔をつけようと、ついむずかしい言葉や漢字を使う人がいます。文章を書く目的は、それぞれ違うかもしれません。しかし、多数の人に読んでもらう目的の場合は、だれが読んでもすぐに理解できる平易な文章にします。大学を出ている人でさえ、読解力はそれほど高くはないからです。

 


校正

 

書いた文書は、かならず、一字一句声を出して読みます。声を出して読むと、文章の長さと呼吸が合っているか確認できます。長すぎれば句読点を入れたり、文章を短くします。

また、一字一句声を出して読むことによって、"てにをは"の間違いを見つけることができます。さらに、パソコン打ちした文書は、けっこう打ち間違いや変換間違いをしています。

 


推敲

 

文章内容に、

おかしなところがないか
理論展開に問題はないか
表現が適切か

などの確認をするのが推敲です。これも大切な作業です。面倒くさがらずに行なってください。

 


文書講座

 

ここまでの内容は、どうすれば、読みやすい「文書」になるかというものです。よい「文章」の書き方については、いろいろ本が出版されていますので、それを参考にしてください。たとえば、

「日本語練習帳」 大野 普著 岩波新書

があります。とても役に立ちます。

「私はそう思います」
「私はそう考えます」 

では、意味が違います。どう違うか解説しています。  

 


≪参考文献≫

 

  成川式「文章の書き方」 成川豊彦著
「センスある日本語表現のために」 中村 明著
「本を書くための本」 千尾 将著
「日本語練習帳」 大野 晋著

 


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