キャビンアテンダント・フライトアテンダントのための
≪苦情旅客対応講座≫
はじめに  苦情処理の心構え編  In-chargeとしての基本対応  具体的処理例
In-Chargeとしての基本対応

苦情、質問、感想

不満そうな顔をしているお客様がいると、サービス側としては気になるところです。そのお客様が、Cabin Crewを呼びとめて、なにか問題を指摘します。そのようなとき、つい自分たちの身を守ろうと構えてしまうことがあります。

お客様が何か苦言を呈しても、緊張して過剰に反応しないでください。お客様も、何か言おうとして緊張しているので、こわい顔になっているかもしれません。お客様の言っていることをよく聞くと、
      「感想」
      「質問」
      「苦情」
に分かれます。お客様が「感想」や「質問」と思って言っていることが往々にしてあります。それを、サービス側が「苦情」ととらえてしまうと、お客様が期待しているのと違う反応になり、問題を大きくしてしまうことがあります。


「聞く、聴く、訊く」からはじめる

お客様の話をよく聞いてください。聞きながら、感想なのか、質問なのか、苦情なのかを見極めます。

苦情の場合だとしても、お客様は、サービス上のミス一つだけでは、怒りを爆発させません。ほとんどのケースは、ミスが重なり我慢の限界に来たときに起きます。

責任者として、最初にすることは、お客様が怒っている本当の原因は何か、突き止める作業です。そのためには、お客様の言い分を十分聴くことから始めます。


真の原因は何か

話しを聴きながら、お客様の言わんとしていることは何か探ります。言葉では、担当CAの態度が悪いとか、食事が遅いとか、機内サービスについて指摘するかもしれません。

担当Cabin Crewに問題がある場合もありますが、時には、飛行機に乗る前の段階(座席予約、チェックインカウンター)で、すでに航空会社に対して不満を持っていることが往々にしてあります。飛行機に乗る前から不満を感じているところに、機内でも、サービスに不手際があれば、それをキッカケに不満を爆発させることになります。お客様は興奮しているので、「言っていること」と「言いたいこと」が必ずしも一致していないことがあります。


興奮しない

責任者として、お客様のところへ出向くのは気が重いものです。出向いて行ったとたんに、他のお客様の目前で、怒鳴られることもしばしばです。自分が怒られているような錯覚に陥ることもあるかもしれません。慣れないうちは、そのようなとき、ドキドキしたり興奮したりします。

お客様は、あなたに文句を言うかもしれませんが、おなたのことを怒っている訳ではありません。あなたは常に冷静に対応してください。


文句 or 苦言

苦情旅客は、2つのタイプに分かれます。  
   文句を言っている旅客
   苦言を呈している旅客

「文句を言う」は、感情が入った言い方です。また、「苦言を呈する」のは、お客様が冷静に判断した結果の指摘と理解するとよいでしょう。もちろん、これらが重なり合うこともあります。

文句を言っているお客様の中には、俺のことをもっとかまって欲しい、という心理が働いています。このようなお客様に対しては、情緒的アプローチが必要です。
 「そうだったのですか。それは申し訳ないことをしてしまいました。大変だった

  のですね」
というような対応が必要です。

時には、やさしいお姉さんのように接します。このようなお客様が欲しているのはCabin Crewの情緒的対応なのです。

一方、冷静に苦言を呈しているお客様には、真摯に問題を確認・把握し、ヒューマンサービス面での指摘であれば、至らなかった点をお詫びしなければなりません。また、ハード面、ソフト面に関する指摘を受けたなら、お客様の苦言内容を会社に報告するなどのアクションをとる必要があり、その旨、お客様にも説明します。 お客様が言っている苦情内容や話しぶりから、どちらなのか探ります。


同調して欲しい

お客様は、自分が指摘している内容について、サービス側に理解して欲しいという心理が働いています。苦情対応で失敗するケースは、同調行動をせずに、サービス側が、自分たちの立場を守ろうとして、最初から言い訳や説明をしてしまう場合です。


ベテラン刑事

取調室で、刑事は、被疑者と向かい合って座り、尋問をします。ところが、もう少しで被疑者が自白しそうだと判断すると、やおら椅子から立ちあがり、被疑者が座っている側に行き、肩に手をおき、少しばかり優しい口調で、

  「どうだ、犯行を認め方が、気がスッキリするぞ」 
  「お前には、子供がいるのだろ。子供のためにも、罪の償いを早くして、また       一緒に暮らしたらどうだ」

などと「情」に訴える言い方をします。

ベテラン刑事は、ここでさりげなく、被疑者の横に位置します。ことばだけでなく、"お前のことを思って言っているんだぞ"ということを態度でも表現します。この位置を「情(同調)の位置」と呼びます。相手に同調していると思わせ、被疑者の情に訴え、犯行を認めさせる方法です。


「礼」の位置と「同調」の位置

お客様から苦情が出ているとの報告を受け、お客様のところに参上したら、最初は、「礼」の位置で接してください。

まず陳謝から入ります。そして、お客様に状況を聞かせてもらいます。この時、さりげなく「同調の位置」に移ります。なぜ、この位置がよいかというと、苦情を言っている旅客に対して、「お客様と対立するつもりはありません。むしろ、お客様の立場に立っています」ということを、無言のうちに表現していることになるからです。


呼吸を整えさせる

日本人旅客の場合は、特にそうですが、お客様はクレームを出してくる迄に、かなり胸にため込んでいます。したがって、心の内では、興奮して呼吸が乱れてします。呼吸が乱れているままで話をさせてはいけません。また、機内では、お客様は座っています。Cabin Crewが立ったまま話しをしたのでは、お客様は上を向いた状態になってしまいます。あごを上げて話してみてください。呼吸するのが、けっこう苦しくありませんか。呼吸が苦しいまま話しをさせては、お客様はますます興奮してしまいます。

そこで、Cabin Crewの方が、しゃがんで(通路席の場合)あげます。そうすると、お客様は、呼吸を楽にして、話すことができるようになります。呼吸が楽になると、興奮状態も少しずつ収まってきます。お客様が話している間は、お客様の言い分をじっくり聞いてください。興奮が収まりはじめると、お客様自身で、何を言いたいのかまとめ始めます。場合によっては、「言いすぎたかな」とも思い始めます。そこで、お客様が本当に言いたいことは何なのか、確認作業に入ります。こちらが説明する段階になっても、言い訳や自己正当化だけはしないでください。解決するものも解決しなくなってしまいます。

お客様の横にしゃがめない場合はどうすればよいのか、という質問がきそうです。この場合は、少なくとも、皆さんの優しさを表現してください。その表現のひとつに、頭をすこし傾けて聞く方法があります。保母さんが幼稚園児へやさしく接するようにするのと同じです。


確認作業

興奮している間は、お客様は聞く耳を持っていません。お客様が興奮してしゃべっている間、サービス側が使ってもよいのは、同調(同情)していること表わす言葉だけです。
 「大変な(つらい)思いをされたのですね」
 「そうだったのですか」
などです。

この同調行動によって、お客様はあなたのことを、自分の話しを聞いてくれる人と思いはじめます。信頼している人に対して、興奮する必要がなくなるので、だんだん落ち着いてきます。

ここで、お客様が言わんとしていることの確認作業に入ります。主張の中に矛盾していることもありあます。誤解していることもあります。このときも、
 「お客様の言っていることに矛盾があります」
とか
 「それはお客様の誤解です」
などと言ってはいけません。確認作業は、

  「この点は、こういうことでしょうか」
  「このように理解してよろしいでしょうか」
  「具体的にはこのようなことだったのですね」

  「私どもは、このようにサービスするよう指示を受ていますが、そうではなかった
   の
ですね」


周囲の旅客を味方につけろ

周囲のお客様は、苦情旅客と皆さんのやりとりを、耳を澄まして聞いています。そして、どちらの方に味方したらよいか考えています。

誠意を尽くして対応している限り、周りのお客様は、心の中で皆さんを応援してくれます。反対に、誠意のない対応をしていれば、苦情旅客の味方をします。

苦情旅客に言いすぎがあったり、過大な要求だったりした時は、回りのお客様を味方につけることも大切です。そのためには、苦情旅客のみならず、周りの目を意識しながら、苦情対応することが必要です。皆さんが誠意を持って対応していることを、周りのお客様にも分かるようにします。

 
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