サービス学講座

 

はじめに

 

モーニングサービス

 

ホノルルの旅行者向けTVで、日本人がよく間違える英語の使い方について、おもしろい番組がありました。ある新婚カップルが、朝食をルームサービスで注文しようとしています。

新婚さん 「モーニングサービス、プリーズ゙」

ホテル側 「Morning service????」

新婚さん 「イエス、モーニングサービス、ワン、プリーズ」

ホテル側 「??????」

注文を受けたホテルクラークは、お客さんの言っていることが今ひとつ分かりません。そこで、支配人に、

「お客様が"Morning service"と言っているが、なにか変です。どうしたらいいですか」

と聞いています。すると、支配人は、

「お客様は、きっと、朝の礼拝に行きたがっているのだよ。連れて行ってあげなさい」

そして、モーニングサービスを注文した新婚さんは、朝食にありつけず、教会に連れて行かれました。

 


“Service”の意味

 

「Service」という言葉は、今では、すっかり日本語化しています。しかしながら、この言葉の意味をちゃんと知っている人は、あまり多くないと思います。
辞書を引いてみると、

① 礼拝・祭式 = 人が神に仕える
② 公務・軍務 = 人が国家に仕える
③ 給仕・サービス業 = 人が人に仕える

とあり、大きく分けると3つの意味を持っています。

-人が神に仕える-

元来は、宗教上使われていた言葉でした。チャペルサービスのように、礼拝を執り行うこと、つまり、人が神に仕えることを意味していました。

-人が国家に仕える-

昔のヨーロッパは、西ローマ帝国の支配、ゲルマン(フランク王国)の統一など、大帝国に支配されていました。ヨーロッパを統一したカール大帝没後(814年)は、それぞれのゲルマン民族は、自分たちの国家をもつようになりました。北にいたゲルマンはドイツとなり、西のゲルマンはフランス、そして、南のゲルマンはイタリアとなりました。ナショナリズムの台頭とともに、国家が重要な時代になりました。それにともない、"Service"の意味も変化し、兵役や軍務に就く(in services)こと、つまり、人が国家に仕えるという意味が加わりました。

-人が人に仕える-

近代から現代にかけては、サービス業の発展とともに、この言葉はさらに変化し、今では、人が人に仕える、いわゆる、"サービスする"という意味としても使われるようになりました。

 


サービスの歴史

 

サービス業と旅とは、古くから、切っても切れない関係にあります。

その昔、人々は聖地への巡礼のために旅に出ました。当時、宿屋はなく、旅の途中は、野宿するか修道院などに泊めてもらいながらの旅でした。

1400年代になると、 人々は、巡礼以外でも、旅行するようになりました。そこで、修道院以外にも、宿泊する施設が必要となり、寝る場所と食事を提供する宿屋、つまり、「Inn」が現れました。これがサービス業の始まりと言われています。しかしながら、ビジネスとしてのサービス業は未発達でした。

 


サービスの有料化

 

1800年代の後半、リッツホテル創始者であるセザール・リッツ(Cesar Ritz 1850~1918)は、宿泊中心の「Inn」から「Hotel」へと宿泊施設を高級化させました。建物を貴族の館風にし、宿泊客を徹底的にもてなすことにより、サービスの有料化を確立しました。

1760年代に始まったイギリス産業革命の結果、生産性が飛躍的に向上し、貴族階級の他に、新興財閥が新たな階級として現れました。また、1789年には、フランス革命が起こり、ベルサイユ宮殿を中心に栄華を誇った王政が排除されました。その結果、上流階級の社交の場であった宮殿が使えなくなってしまいました。リッツは、ホテルをその代りの場所として、上流階級の人々に提供したのです。また、宮廷料理人たちも、宮廷での仕事がなくなり、街に出ました。(情緒的サービス)

1900年代前半になると、アメリカでも、ホテル業が発展しました。ホテルが、「豪華なもの」「高級なもの」であることに加え、館内にショップやアスレチックジムなどの施設がつくられるようになり、宿泊客がホテルの中でいろいろ楽しめるようになりました。このように、「便利な宿泊施設」としてのホテルを確立したのが、E・M・スタットラー(Ellsworth Milton Statler1863~1928)です。(機能的サービス)

(参考)
作家のジェフリー・アーチャーは、その著書「ケインとアベル」や「ロスノフスキ家の娘」で、アメリカでヒルトンホテルやスタットラーホテルが開業した当時を描いていますので、興味ある方は読んでみてください。

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